最近の母はよく大人のぬり絵をしています。
書店には、認知症予防として沢山の大人のぬり絵が並んでいます。
傾聴ボランティアに伺う有料老人ホームや、老健(介護老人健康施設)では、
ぬり絵を楽しまれていらっしゃる方を時々お見かけします。
ですが、認知症の方のグループホーム🏠では、あまり見かけられません。
認知症がすすむと、枠からはみ出さないように色を塗るという動作は
難しくなるようで、(私達は普段それを当たり前のようにしていますが)
脳にとってそれは、とても高度で複雑な伝達作業のようです。
大半の女性の方は、四季の花々のぬり絵がお好きですが、
母はそれは 🙁「花のは単調で面白くないわ」と言います。
まんだらぬり絵の方が面白いと言います。
🙄「色が重ならないように、尚且つ美しく!」を心がけているそうです。
確かに母は散歩をしていても、あまり花に興味を示しません。昔からそうでした(・_・)
ですのでそんな母に育てられた私は、私が花の名前をあまり知らないのは、
母譲りだとずっと思ってきました。
母は幼い頃から、勉強が好きで成績も優秀て、数学教師を目指していた女性です。
"(-""-)"「なるほどね」と、私はちょっと納得しています。
施設でも、マンダラぬり絵はどちらかと言えば、男性の利用者さんが好みます。
母の脳は、花をめでる事よりも、思考をめぐらす方が好きな脳なのだと思います。
母の家には、こんな塗り絵もあります。
2017年に主人と行ったスペイン旅行の、母へのお土産のぬり絵です。
(T_T)母にはまだ1枚も塗ってもらえていませんが、
このぬり絵は、別のところでとても役に立ちました。
2017年当時私は週に1回、近所のサービス付き高齢者向け住宅の掃除や、
その施設の一角でカフェを運営していた、
就労支援サービスグループのボランティアをしていました。
私は、そこに住まわれている高齢の入居者さんと、
支援グループの若者を繋ぐような役割をしていました。
そこでは、お茶を飲みながら、ぬり絵や折り紙遊びなどをよくしました。
私がそのボランティアを始めて少し経った頃、
Hさんと言う🙍♂️一人の青年がグループに入って来ました。
しばらく、彼は無表情でほとんど私語を発することもなく、
なかなか彼と入居者さん達が話す機会はありませんでした。
ところが、私が👆このスペインのぬり絵を持った行った日、
Hさんは、そこがスペイン、マドリッドの街並だとすぐわかり、
描かれている『ゲルニカ』がどのようにピカソによって描かれたかの史実や、
他のページの、スペインの建造物の話などをして、皆を驚かせました。
彼は世界史が得意だったようで、そこから海外によく行かれていた入居者男性と
よく話をするようになりました。
又、とても複雑でなかなか折れないバラの折り紙を、
Hさんはとても上手に折り、そのバラ欲しさに集まる女性入居者さん達から
👩🦳🧓👳♀️「折り紙の先生」と呼ばれ、引っ張りだこの人気者になりました。
その頃から、彼の顔にも笑顔が見られるようになりました。
彼は1年ほど、この支援グループで活動した後、
私立の男子校の社会の非常勤講師になり、グループから巣立って行きました。
何故あんなに優秀なHさんが、それまで社会になじめず苦しんでいたのか、
詳しいことは分かりませんが、あの就労支援プログラムで
入居者さん達と触れ合う事で、人に尊敬され喜ばれることで、
生きていく活力を取り戻したんだと思います。
今日は、母の日課のぬり絵から、Hさんの事を思い出しました。
あれから4年が過ぎました。彼が人の心の痛みの分かる
素敵な教師になってくれていると良いなぁと思った1日でした。