with age 92歳の母のぼちぼち介護日記

母の介護を通して、素敵な歳の重ね方を学びます。

魔法の歌

f:id:withtheage:20201114225449j:plain

昨日、『魔法の言葉』と題したブログを書きました。

今日は『魔法の歌』について書きたいと思います。


私が傾聴ボランティアで伺う介護施設の利用者の方達が、
1番楽しみにしていらっしゃるレクリエーションは、音楽療法の時間です。

音楽療法の先生がピアノを弾き、利用者の方達が歌うのです。

昭和初期~の曲で、60代の私がギリギリ歌えるか⁇な曲達です。

人気の曲は、小学唱歌で、「春の小川」「おぼろ月夜」「ふるさと」等です。
特に「ふるさと」は歌いながら涙を浮かべる方もいらっしゃいます。

ふるさとから離れて、長い人生を過ごされ、
今この曲から、幼い頃過ごした「ふるさと」に、
そしてもう会うことの叶わぬ親御様、兄弟やお友達に
想いを馳せていらっしゃるのでしょう。



故郷(童謡 ふるさと)


謡曲では、圧倒的に「リンゴの唄」がお好きです。
敗戦直後の日本人の心に希望の風を運んだ歌です。

私の母もこの歌に1番思い出があると言います。


リンゴの唄

「ふるさと」も「りんごの唄」も十分高齢者を青春時代に戻す
タイムマシンのような魔法の歌なのですが、
私が1番魔法の歌だと思っている曲は別にあります。

そのお話をさせて下さいね。

2年ほど前の話です。
ある施設にボランティアで伺うと、
窓際に新しく入居されていたM様が座っておられました。

お話を聴かせて頂こうと近づこうとすると、職員の方に、
「Mさんは、噛み付いたり、叩いたりするから気をつけて下さい」と注意されました。

まだ高齢者というにはお若いのに、介護施設に来られたということは、
精神的なお病気をお持ちだったのでしょう。

確かに、ご機嫌を損ねると暴れられるので、訪問看護の医師も
「今日はMさんご機嫌悪そうなので、診ないで帰ります」と帰られる日もありました。

Mさんは私達が活動している時間中一言も言葉を発せられません。
ですので、お話を聴くことはできません。

ですが何回かお会いする内に、私はMさんと仲良く⁈なりました。

お散歩にお誘いすると、ホームの中をぐるぐる歩くだけなのですが、
私の手をギュッと握って、ほかの方が私に声をかけるのを嫌がられます。
なんか可愛いでしょ❣


そんな訪問日を何度か過ごした頃、
私達の活動日が音楽療法の日と重なるようになりました。

他の方は嬉しそうに音楽療法の部屋へ行かれますが、
Mさんは行くのを嫌がられ、私と二人残ることになります。

けれどその日は
「Mさん、私参加してみたいのですが、一緒に行って下さいませんか?」
と、お聞きしてみました。
すると彼女は、両手で私の顔を挟み、ジーと見つめ、
その後私の手を取って、立ち上がって下さったのです。

部屋へ行くとしばらくはじっと聞いておられましたが、
後半は、懐かしい曲にMさんもやはり楽しかったのでしょう。
体を揺すられてリズムを取られていました。

そして、この時間の定番のラストの曲になりました。
この「高原列車は行く」です。


高原列車は行く 高齢者体操

先生から、カーが配られ曲が始まりました。
その時、Mさんに魔法がかかりました。
なんと歌い出したのです。

私初めて聞きました。Mさんの声を。

曲の最後の
♬ラララ・・・高原列車はララ・・・行くよー♬ヘイ❗️

は、一番声が大きかったかもです。

音楽療法の先生もMさんの声初めて聞かれたそうで、後で言われていました。
「こんなご褒美があるから、このボランティアはやめられないのよー😉」

ホントです。その日そこにいなかったら、あんなに感動することなかったですものね。


歌には魔法の力があるのは皆さんご存知のことでしょう。
人それぞれに魔法の歌はあるのだと思います。

今ちょうど朝ドラ『エール』が、この曲の作曲家
古関裕而さんのお話しで、この歌もよく流れます。
母もTVと一緒に口ずさんでいました。

私にとって、「高原列車は行く」は、
目の前で起こった魔法の歌なのです。